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M.U.R.A.I. 処理(マトリクス処理)

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1.概要

M.U.R.A.I.処理とは超音波探傷映像化装置で行われる画像処理方法で、従来より行われている音圧(エコー高さ)あるいはビーム路程のデータを単純階調処理する方法と異なり、音圧情報に反射波の位相情報をマトリクス状に複合処理しカラー階調表示する方法である。この処理により接着と剥離の識別、金属中の非金属介在物とボイド(空孔)の識別等のアプリケーションが可能になる。

2.境界面での超音波の反射

一般に音響インピーダンスの異なる二つの物質の境界に超音波が垂直に入射した場合入射した音圧と反射した音圧の比Rは第1の物質の音響インピーダンスをZ1、第2をZ2とすると次式で表される。

図1 境界に於ける反射と通過

図1  境界に於ける反射と通過

ここでRの係数は反射波の位相を表し正であれば正転、負であれば反転を表す。すなわちZ2>Z1(たとえば水から鋼)であれば位相は正転し、Z2<Z1(鋼から水)であれば位相は反転する。:図2参照

これを利用すると接着と剥離、介在物とボイドの識別が可能となる。但し識別する物質の音響インピーダンスの関係が上記の条件を充たさなければならない。

物質 アクリル アルミニュウム アルミナ
音響インピーダンス 1.5 3.2 45.4 16.9 約40

3.高ダンピング探触子

位相反転を利用するためにはダンピングの高く上下非対称の波形を有する探触子が必要である。高ダンピングの探触子としては、セラミック系ではニオブ酸鉛の振動子と特殊なバッキング材より構成された探触子がある。またポリマー探触子は素材自身が高ダンピング特性を持ち100MHz程度までの高周波の対応が可能なことと、焦点型振動子が作りやすい事から位相反転を利用するアプリケーションに最適である。ポリマー探触子の反射波形を示す。周波数25MHz焦点距離 12.5 mm SUS材板厚0.76 mmのSエコー及びBエコーを表示しており、Sエコーとバックエコーの位相が反転していることが解る。

図2 ポリマー探触子の波形

図2  ポリマー探触子の波形

4.M.U.R.A.I. 処理

M.U.R.A.I.処理の原理図を示す。

図3 M.U.R.A.I.処理

図3  M.U.R.A.I.処理

マトリクスに於ける横軸は位相 (P / A) を示し縦軸はエコー強度 (A=P+N)を示す。また疑似カラー表示のカラーパレットは横軸方向に3色配置され256階調、縦軸は明度を256階調に配置されエコーデータのマトリクスと1対1の対応がとられている。これにより超音波透視装置によるCスキャンデータの色相、明度を見ることにより探傷波形の位相、強度を知ることが出来る。

さらに横軸、縦軸を何段階かに分け、従来のエコー高さのみのスレッシュホールドに位相のスレッシュホールドを設けることにより剥離部分の面積率、介在物の面積率等のアプリケーションに利用できる。

5.半導体の探傷に於けるM.U.R.A.I. 処理の例

図に於ける青色はリードフレームの接着を示し、赤色はリードフレーム部のはく離、チップ周辺部はクラックを示す。

図4 MURAI処理表示, 図6 正常接着部の波形(青色部), 図7 はく離部の波形(赤色部)

図4  MURAI処理表示

図6  正常接着部の波形(青色部)

図7  はく離部の波形(赤色部)

図5 通常のエコー高さ表示

図5  通常のエコー高さ表示

図8 MURAIマトリクス

図8  MURAIマトリクス

6.アルミ材に於けるボイドと介在物の例

アルミニュウム材中の介在物特に酸化アルミ(Al2O3) は音響インピーダンがアルミニュウムより大きくボイドと識別することが出来る。図5に256×256階調、図6に位相のみを3階調にしたCスコープを示す。また図7にボイドのエコー波形、図8に介在物のエコー波形を示す。

図9 256×256階調, 図11 介在物のエコー (青色)

図9  256×256階調

図11  介在物のエコー (青色)

図10 3階調, 図12 ボイドのエコー (赤色)

図10  3階調

図12  ボイドのエコー (赤色)

7.位相変化のシミュレーション

図13 波形の位相変化

図13  波形の位相変化

8.鋼中の介在物

鋼中の介在物としてはAl2O3、MnO-SiO-Al2O3、MnS等が知られておりその中でもAl2O3は圧延されても延びないためスラブ段階でのボイド/介在物の識別ポイントとなっている。音響インピーダンスは、鋼>Al2O3>ボイドとなるためこれまでの理屈では位相反転はせず識別は不可能となっている。しかしながら、探傷実験ではAl2O3はボイドと位相が違い識別が可能となっている。この詳細については割愛するが音響インピーダンス以外に二つの物質の境界条件を入れた振動方程式によりAl2O3の反射波の位相はあたかも鋼より音響インピーダンスが大きいような挙動を示すことが実証された。

9. 終わりに

M.U.R.A.I.処理は上下非対称の超音波エコーを利用し境界条件の違いを位相変化、反射強度の複合処理(マトリクス処理)し画像化する方法である。音響インピーダンスの違いのみではなく他のアプリケーションに役立つことを願います。