株式会社KJTD

MURAI処理法/Minimum Unite Rating Analysis Image (特許:2896385)

1. 概要

M.U.R.A.I.処理とは超音波探傷映像化装置で行われる画像処理方法で、従来より行われている音圧(エコー高さ)あるいはビーム路程のデータを単純階調処理する方法と異なり、音圧情報に反射波の位相情報をマトリクス状に複合処理しカラー階調表示する方法です。この処理により接着と剥離の識別、金属中の非金属介在物とボイド(空孔)の識別等のアプリケーションが可能となります。

2. 境界面での超音波の反射

一般に音響インピーダンスの異なる二つの物質の境界に超音波が垂直に入射した場合入射した音圧と反射した音圧の比Rは第1の物質の音響インピーダンスをZ1、第2をZ2とすると次式で表されます。

境界に於ける反射と通過
図1:境界に於ける反射と通過

ここでRの係数は反射波の位相を表し正であれば正転、負であれば反転を表します。すなわちZ2>Z1(たとえば水から鋼)であれば位相は正転し、Z2<Z1(鋼から水)であれば位相は反転します。:図1参照

これを利用すると接着と剥離、介在物とボイドの識別が可能となります。ただし識別する物質の音響インピーダンスの関係が上記の条件を充たさなければなりません。

物質 アクリル アルミニウム アルミナ
音響インピーダンス 1.5 3.2 45.4 16.9 約40

3. 高ダンピング探触子

位相反転を利用するためにはダンピングの高く上下非対称の波形を有する探触子が必要となります。高ダンピングの探触子としては、セラミック系ではニオブ酸鉛の振動子と特殊なバッキング材より構成された探触子があります。またポリマー探触子は素材自身が高ダンピング特性を持ち100MHz程度までの高周波の対応が可能なことと、焦点型振動子が作りやすい事から位相反転を利用するアプリケーションに最適です。図2のポリマー探触子の反射波形では、周波数25MHz焦点距離 12.5 mm SUS材板厚0.76 mmのSエコー及びBエコーを表示しており、Sエコーとバックエコーの位相が反転していることがわかります。

ポリマー探触子の波形
図2:ポリマー探触子の波形

4. M.U.R.A.I. 処理

M.U.R.A.I.処理の原理図は以下の通りです。

M.U.R.A.I.処理
図3:M.U.R.A.I.処理

5. 半導体の探傷に於けるM.U.R.A.I. 処理の例

図における青色はリードフレームの接着を示し、赤色はリードフレーム部のはく離、チップ周辺部はクラックを示しています。

M.U.R.A.I. 処理例

図4:MURAI処理表示

図6:正常接着部の波形(青色部)

図7:はく離部の波形(赤色部)

通常のエコー高さ表示
図5:通常のエコー高さ表示
MURAIマトリクス
図8:MURAIマトリクス

6. アルミ材に於けるボイドと介在物の例

アルミニウム材中の介在物特に酸化アルミ(Al2O3) は音響インピーダンスがアルミニウムより大きくボイドと識別することができます。図9が256×256階調、図10が位相のみを3階調にしたCスコープです。また図12がボイドのエコー波形、図11に介在物のエコー波形を示しています。

ボイドと介在物1

図9:256x256階調

図11:介在物のエコー(青色)

ボイドと介在物2

図10:3階調

図12:ボイドのエコー(赤色)

7. 位相変化のシミュレーション

波形の位相変化
図13:波形の位相変化

8. 鋼中の介在物

鋼中の介在物としてはAl2O3、MnO-SiO-Al2O3、MnS等が知られており、その中でもAl2O3は圧延されても延びないためスラブ段階でのボイド/介在物の識別ポイントとなっています。音響インピーダンスは、鋼>Al2O3>ボイドとなるため、これまでの理屈では位相反転はせず識別は不可能です。しかしながら、探傷実験ではAl2O3はボイドと位相が違い識別が可能となっています。この詳細については割愛しますが音響インピーダンス以外に二つの物質の境界条件を入れた振動方程式によりAl2O3の反射波の位相はあたかも鋼より音響インピーダンスが大きいような挙動を示すことが実証されました。

9. 終わりに

M.U.R.A.I.処理は上下非対称の超音波エコーを利用し境界条件の違いを位相変化、反射強度の複合処理(マトリクス処理)し画像化する方法です。音響インピーダンスの違いのみではなく他のアプリケーションに役立つことを願います。